取材歴25年。平均睡眠時間2時間。
フリーランスライター、畠山理仁 50歳。
選挙に憑りつかれた、その情熱と苦悩に迫る。

　選挙の面白さを伝えるフリーランスライター・畠山理仁(50)。国政から地方選、海外まで、選挙取材歴は25年を超え、候補者全員を取材することを記事を書く上での信条としている。それらを書籍にまとめた「黙殺～報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い～」（集英社）は、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞するなど、高い評価を受けてきた。そんな畠山の肩越しにカメラを据えると、一体どんな世界が映り込むのか。日本の民主主義の現在地と、選挙に憑りつかれたフリーランスライターの情熱と苦悩に迫る。『なぜ君は総理大臣になれないのか』(20)、『香川1区』(22)、『劇場版 センキョナンデス』(23)、『国葬の日』(23)のプロデューサー前田亜記が監督を務める。音楽は、畠山を「師匠」と慕うラッパーのダースレイダー（『劇場版 センキョナンデス』監督）が率いるバンドThe Bassons（ベーソンズ）が担当。渾身のオリジナル曲が生まれた。

全員取材できるまで書きません！

　テレビ、新聞では決してやらない「候補者全員取材」。
すべての候補者が同額の供託金を支払い、対等な立場で立候補しているにも関わらず、黙殺されてしまう人たちがいる。世間では「泡沫候補」と呼ばれるが、畠山は敬意を込めて「無頼系独立候補」と呼ぶ。「すべての候補者の主張を可能な限り平等に有権者に伝える。それが、選挙報道の任務を負った者のスタート地点である。」

INTRODUCTION

　2022年7月の参院選・東京選挙区で34人の候補者全員への取材を試みる畠山に文字通りの”密着取材“ を敢行。
　都内各所で行われる候補者の街宣を分刻みで巡っていくと、そこには超個性的な候補者の姿が。候補者が珍種なら、取材者である畠山もまた珍種。1人で選挙現場を走り回り、睡眠時間は平均2時間…。本業である原稿書きもままならず、経済的に回らないという本末
転倒な生き方を続けてきた。畠山ももう50歳。
　お金にならない選挙取材人生によって、これまで家族にも散々迷惑をかけてきた。「この生き方もそろそろ潮時」と、参院選の最終日、引退を口にする。
　9月に行われた沖縄県知事選の取材を最後にすると語る畠山を追って、沖縄へ。
　そこで出会ったのは、他の地域では見られない、有権者の選挙への高い参加意識と、民主主義を諦めない県民の思いだった…。

　大阪先行上陸イベント

STORY　

バレエ大好き党。トップガン政治。炭を全国でつくる党。
ミルクおやじ。超能力者。
ユニークでパワフル、チャーミングで、真面目な候補者。

　フリーランスライター・畠山理仁の自宅の仕事部屋。「今日これから徹夜です」と言いながら、畠山はこれまで取材してきた候補者たちのポスターやチラシを見せてくれた。選挙取材歴25年、選挙と名がつけば、国内外どこにでも赴いた。そこにはビル・クリントンのチラシも。変わり種の候補者ともたくさん出会ってきた。たとえば「ミルクおやじ」。乳ミュージックというジャンルのミュージシャンで、現職の埼玉・深谷市議会議員だ。しかも上位当選だという。候補者たちを撮影した映像のテープも膨大に残されている。だがこれらはあくまで、自身が記事を書くときの記録用。この日は原稿を書く予定だというが、筆が進まない。「執筆している姿を見たことがないですが？」と問うと、「執筆してないからじゃないないですか」と畠山は苦笑した。とにかく現場での取材が大好き。だが「ライター」という稼業なのに、書くのが苦手という畠山。今はやりのコスパやタイパは無視、選挙取材に人生をかける珍種のライターの仕事の現場を追った。

監督：前田亜紀 プロデューサー：大島 新
編集：宮島亜紀 整音・効果：高木 創
音楽： The Bassons（ベーソンズ）
製作：ネツゲン 配給：ナカチカピクチャーズ
Ⓒネツゲン
　
公式HP：https://nosenkyo.jp/

2023年11月18日(土) ポレポレ東中野より
全国順次公開