主演・杉咲花が公開翌日の大阪で舞台挨拶に登壇!
INTRODUCTION
成島出監督が杉咲花を主演に迎えた映画『52ヘルツのクジラたち』。町田そのこによる原作「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社)は、2021年の本屋大賞を受賞し、間もなく売り上げ100万部超えの圧巻の傑作ベストセラー小説。
そんな本作の公開を記念し、3月2日(土)、大阪のTOHOシネマズなんばで、自分の人生を家族に搾取されてきた主人公・三島貴瑚(みしま・きこ)を演じた杉咲花さんが、上映後に舞台挨拶を行った。
満席の観客から大きな拍手で迎えられた杉咲さんは「大切な時間をこの映画に割いていただいてありがとうございます」と感無量の面持ちで挨拶し、舞台挨拶は始まった。
大阪が舞台だったNHK連続テレビ小説「おちょやん」で約1年大阪に住んでいた杉咲さん。MCから「おかえりなさい」と声をかけられると「大好きな街なので嬉しいです。私も「ただいま」と言いたくなる。大阪に来ると特別な感情が沸いてきます」と語り、「朝ドラの撮影中はコロナ禍だったのであまり外出できなかった」と振り返り、今一番行きたいところは「鶴橋」だと言うと、場内からは笑い声が。「キムチを買いに行きたい」と理由を明かし、さらに「さっき、いか焼きとたこ焼きも食べました。いつ食べても美味しいですよね」と笑顔を見せた。
昨日公開初日を迎えた本作。今の率直な思いを聞かれると「1人なので緊張しますね」とはにかみ、「映画どうだったかな?と聞いてみたい」と言うと場内からは大きな拍手が。
本作の中でも特に印象的な貴瑚が大分で暮らすテラスのある家は、「監督と脚本家の方がシナリオハンティングの時に偶然見つけた場所」だったそう。「しかも、7年ほど前に迷いクジラが見えたそうで、ご縁を感じています」とのこと。「景色が本当に美しくて、天気にも恵まれて」と振り返り、東京での撮影後に大分で撮影したこともあり、「心が開けていく感覚があった。大分の土地の力もあったと思います」と思い返していた。
また、成島出監督と初めて会った時に「飛び込んできてください」と言われたと語り、「作品の主役は主人公や監督ではなく、作品そのものだから、キャリアや役割といった垣根を超えたところでものづくりをしていきましょう」という言葉をかけてくださった。撮影でも常に価値観のすり合わせが行われていて、こんなにも真摯に取り組める環境を用意してくださったことに感謝しています」と話した。
続けて、貴瑚にとって特別な存在であるアンさんを演じた志尊淳さんについて杉咲さんは「全てのシーンが強烈に私の中に残っている」と思いを語り、「貴瑚が母親に別れを告げに行くシーンの撮影では、本番の直前に必ず志尊くんが私の顔をじっと見つめてくれる。向けられる眼差しだけで心に届いてくるものがあった」と振り返り、「カメラに映らない時間こそ、すごく大切に愛情深く常に傍にいてくださった」と感謝の気持ちを述べた。
さらに、「志尊くんから言われた言葉」として、「僕はアンさんのことをすごく尊敬しているけれど、自分はアンさんみたいな選択はできないんじゃないかと思う。だからこそ、現場で過ごす以外の時間もアンさんのように寄り添っていたいと思った」とおっしゃっていて。本当に素晴らしい共演者の方に恵まれたと思っています」と深い感謝の思いを語った。
そして、上映後の舞台挨拶だから話せる裏話として「エンドロールに、夕陽を見つめる2人の背中が映っていると思うんですが、当初は撮る予定ではなかったんです」と語り、「別のシーンを3回に分けて撮影している時に、ものすごく美しい夕陽が差し込んできて。何が起きているかわからないまま撮影しました」と明かした。
また、裏話として「あの堤防にはフナムシが大量発生していて」と明かすと場内からは驚きの声が。「綺麗な夕陽を見つめて3分間ぐらい立ち続けていないといけなかったんですが、人間がじっとしているとフナ虫が迫ってくるので、私たちは怯えながら立っていました(笑)」と笑いながら話した。
最後に、杉咲さんが「人の痛みを全てわかることはとても難しいことだと思いますが、わからないことは決して無力ではないと思っています。わからないからこそ、相手のことを知ろうと思えたり、優しくしたい、隣にいたいと思ったり。どうか諦めないで人と関わっていこうというメッセージを感じられるこの作品を大切に思っています」と力強く語った。
続けて、「私たちは1人でも多くの方がこの作品に居場所を感じてもらえるよう願いをこめて作りました。とても繊細な領域に踏み込んで描いた映画なので、いろんな意見があると思いますし、それを受け止めながら、この先も物語に関わっていきたいと思っています。また、出来上がった作品をここに届けにこられるように頑張りますので、良ければまた会いに来てください」と作品をPRし、舞台挨拶は終了した。
STORY
「この〈52ヘルツのクジラ〉の鳴き声は、あまりに高音で、
他のクジラたちには聴こえない。
だから、世界で一番孤独なクジラって言われてるんだ─」
海を見下ろす高台に佇む一軒家。東京からやって来た三島貴瑚(杉咲花)は、亡き祖母が暮らしたこの家に一人で住み始める。ある時、突然の雨に打たれて倒れていた貴瑚に、少年(桑名桃李)が傘をさしかけてくれる。貴瑚は声を発しない少年を家へと連れて帰り、濡れたTシャツを着替えさせようとするが、背中一面のあざを見て驚く。その瞬間、少年は逃げ出してしまう。
翌日、貴瑚は家の修理を頼んだ工務店の村中(金子大地)から少年の母親・琴美(西野七瀬)を紹介されるが、彼女は自分には子供はいないと言い放つ。再び現れた少年を優しく歓迎した貴瑚は、少年にプレーヤーに録音されたクジラの声を聴かせる。それは、他の仲間には届かない52ヘルツの声で鳴く、ひとりぼっちのクジラの声だ。貴瑚は少年に自分もかつて母親からぶたれ、いつも「助けて」と心の中で叫んでいたと語る。「あんたも同じじゃない? でも、あんたの声、私には聴こえたから」と少年を慰める貴瑚は、「私にもね、たった一人、私の声を聴いてくれた人がいたんだよ」と打ち明ける。
それは、3年前のこと。高校卒業後、毎日ひたすら義理の父の介護に身を捧げていた貴瑚は、母(真飛聖)から義父の病状の悪化を責められ、絶望を抱えて街を彷徨っていた。走ってくるトラックの前に進み出た貴瑚を助けたのが、塾講師の岡田安吾(志尊淳)だった。安吾と一緒にいた同僚が、貴瑚のことを心配していた同級生の牧岡美晴(小野花梨)だったことから、貴瑚は二人に手を差し伸べられる。安吾は貴瑚に、家を出て「新しい人生を生きてみようよ」と提案するのだった。
美晴のマンションに寝泊まりし、安吾に導かれながら義父の介護施設や一人で暮らすアパートを探す貴瑚。何年ぶりかに笑顔を取り戻した貴瑚は、安吾に付き添われて実家に帰り、縋り付く母親に何とか別れを告げる。帰り道、泣き崩れる貴瑚を、「第2の人生では魂の番と出会うよ。
愛を注ぎ注がれるような、そんな人ときっと出会える」と励ます安吾が、52ヘルツのクジラの鳴き声をプレゼントしてくれたのだった。安吾は自分たちを「アンコとキナコ」と名付け、信頼の絆を結んでゆく。
そんな過去のある貴瑚には、息子を「ムシ」と呼ぶ琴美のもとに、少年を返すことはできなかった。貴瑚は、少年が筆談で「会いたい」と願う「ちほちゃん」の元に、少年を連れて行こうと決意する。そんな中、突然、東京から姿を消した貴瑚を探していた美晴が現れ、旅に同行することになる。道すがら美晴は貴瑚に、本当は安吾と何があったのかと尋ねるのだった。
2年前、化粧品会社の工場で働く貴瑚は、ある夜、何気ない風を装い、安吾に「アンさんは私にとって特別な人で、大好きで……。アンさんは? 私のこと好き?」と問いかける。「心からキナコの幸せを祈っている」という安吾の答えに、「一生の友達だもんね」と微笑む貴瑚。一人になってから、貴瑚はたまらず涙を流すが、安吾の頬もまた涙で濡れていた。
その後、貴瑚には新名主税(宮沢氷魚)という初めての恋人ができ、新たな人生を歩み始める。だが、思わぬ出来事が、すべてを一瞬で変えてしまう──。
STAFF&CAST
杉咲花 志尊淳 宮沢氷魚 / 小野花梨 桑名桃李 金子大地 西野七瀬 真飛聖 池谷のぶえ / 余貴美子 / 倍賞美津子 監督:成島出 原作:町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」(中央公論新社刊) 主題歌:「この長い旅の中で」Saucy Dog(A-Sketch) 配給︓ギャガ © 2024「52ヘルツのクジラたち」製作委員会 公式HP:https://gaga.ne.jp/52hz-movie/ X:@52hzwhale_movie
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